飴玉感覚
02
対戦なんて嫌いだ。
顔が見えるのにどうして戦うなんて野蛮な真似ができるんだろうか?
そう、僕はみんなと違ってしまった。
顔が見えてしまうんだ。
疲れた。
どこかで休みたい。
彼は視界の先に誰も管理することなく放置されているサイトを見つけた。
ここなら誰も来ない。
管理人すら来ない。
彼はそこで羽を休めた。
彼の姿は…一言で言えば曖昧。
どこまでが彼でどこからが彼でないのかすら…
輪郭線がぼやけた感じがする。
そこに、やはり曖昧な羽が生えている。
これは彼の趣味なのか。
ネットワークを飛び回る彼のイメージの産物なのかはわからない。
突然、羽を休めていたサイトがガラガラ崩れていくのを感じた。
管理されていないので削除されているんだろう。
「折角休んでいたのに…」
愚痴るが、致し方ない。
彼は休んでいたそこが、さらさらと無に帰っていくのを見た。
自分はまだ無に帰りたくはない。
死にたくはないのだ。
でも、あまり生きていたくもない。
だからネットワークに依存する。
自分を守るために。
誰にも触れたくない。
けれど、傷つくことなく誰かと触れ合える場所に。
決まったサイトは持ちたくなかった。
持てば角が立つ。
攻撃の的にされるかもしれない。
関わりあいたくない人とも関わり合いになる。
それだけはごめんだった。
彼はサイトが一つ、無に戻ったのを確認すると、
また、飛んでいった。