飴玉感覚
06
人影は電脳娘々と名乗った。
一瞬猫の親戚かと思ったが、にゃんにゃんを娘々と変換があったので、
娘のことなんだろうと思った。
…保護しに来た、という。
嘘をついている気配はない。
けれど、大人はこうやって嘘をつくのだ。
追い返さなければならない。
二度と自分に関わらないよう、恐怖を与えなければならない。
「いけーっ」
彼は武器を取り出した。
通称ロリポップ。
他人を傷付けるために作られたキャンディーだ。
彼がロリポップを振り回す。
線路がぶつ切りになった。
電脳娘々は攻撃を全て僅差でよける。
「あぶないなぁ…」
と、溜息つきながら。
それでも彼はロリポップを振りまわす。
だんだん娘々を怖がっている自分に気がつかないまま…
ふと、怖い、と、思った。
自分の攻撃がすべてかわされている。
しかも容易く。
本気を出されたらどうなるんだろう?
向こうからかかられたらどうなるんだろう?
保護するといっていたが、本当は…
…本当は、殺す気なんじゃないだろうか?
「もうおしまい?」
娘々がけだるそうに言う。
その言葉を聞き、そして数秒の間があった。
と、突然、彼はロリポップを爆発させた。
線路は一部吹き飛び、煙幕が張られた。
彼は逃げた。
こんな大人には関わらない方がいい。
自分が傷つくだけだから。
傷つかない場所に行きたい。
安心できるところに行きたい。
彼は鳥篭街から逃げ出した。