飴玉感覚
07
彼は鳥篭街から逃げ出して、閉鎖されたサイトのはしっこにいた。
雰囲気は暗いが、これだけ暗ければ誰も来るまい。
彼はそう思った。
大人は独善的で嫌い。
僕以上に悪いと思う。
そして、恐い。
恐い人間は嫌われてしまえ。
僕はみんなに好かれたいんだ。
どこかに自分のサイトを持とうかと彼は思った。
それはいけない。
どこかにサイトを持てば、傷つける誰かがやってくる。
それは避けなくてはいけない。
せめて、休む場所が欲しい。
彼はひとときネットから外れることにした。
どうして現実も夢も疲れることばかりなのだろう?
こんなに疲れたらそのうち疲れすぎて死んでしまうよ…
彼は溜息をついた。
彼はゴーグルをはずした。
当たり前のディスプレイとコンピューターがそこにあった。
怪しげな店で手に入れたゴーグル型ディスプレイは、
彼にネットの世界のもう一つの側面を見せてくれた。
相手の顔が見えること。
だから彼は、疲れてしまうのだ。
どこへ行っても視線が気になる。
見られている気がする。
自分が悪い気がする。
疲れてしまうのだ。
あの時戦った彼女はうそつきではなかったのだろうか?
もし、保護しに来るだけなら…
もし、彼女の言葉にしたがっていれば…
疲れなくて済む世界に行けたのかな…
彼はそこまで考えて、やめた。
明日またネットの海を飛ぼう。
今日はここまで。
彼はベッドに潜り込んだ。
よい夢を見るために…