飴玉感覚
08
夢を見た。
夢の中ではどこか夢だとわかっているのに、現実のように必死になっている自分がいた。
自分は柱の乱立している広間の上空を飛んでいた。
正確には広間というより場所だった。
まわりは薄ぼんやりとぼやけ、
どちらが上か下かがわからなかった。
ただ、柱と床だけがあった。
8畳ほどの広さの床と、そこに何本も乱立する柱。
彼はそれを眺めながら飛んでいた。
彼はそこに降り立った。
ここで羽根が休められるだろうか?
淡い期待を持っていた。
ふと、前をみると、人影が柱の陰に隠れた。
誰か、いる。
見られている。
見られるのは嫌いだ。
ここから逃げ出さなくては、彼はそう思った。
逃げだそうと飛ぼうとするが、羽根は鉛のように固まってびくともしない。
「助けて」
かすれた声で叫ぶ。
誰かは近づいてくる。
罠にかかった子ウサギを捕獲する猟師のように。
彼はあがく。
誰かが自分のすぐ傍で止まった。
彼は恐る恐る誰かを見た。
目覚しがなった。
彼は寝ぼけながら目覚しを止めた。
…夢とわかっていても恐かった。
おそらく次の瞬間には自分はひどい目に合わされていたんだろう。
そう彼は思った。
目が覚めてよかった。
悪夢は目覚めたときほっとする。
シャワーを浴びよう。
悪夢のかけらを流すように。