飴玉感覚
12


彼は八卦池の水面下から自在に飛んでみた。
冷たい感じのする水の中を、
暖かい感じのする風の中を。
彼は思うように飛んだ。

自由だ!
彼は思った。
それでも、帰るところはない。
いや、正確にはあるが落ち着ける場所がない。
安らぎがない。
家は安らぐ場所ではない。
彼はそう認識していた。

彼は思うままに飛び…
遠くに光を見た。
光のある方へ飛ぶと、光はだんだん大きくなって…
海への出口となった。

海だ…
まごうことなき海。
その上空に彼はいた。
傍に目玉の形をした物体が何かを発信していた。
ビィービィーと。
彼はすぐに感づいた。
ここに張り込まれている。
自分は網にかかってしまったらしい。

彼は海の水面すれすれまで下りる。
警戒は全然解けない。
本当はすぐにでも海に飛び込みたい気分だったのだが…
この海に入った途端、自分が砕かれるような気がした。
追われている以上どこにも安心はない。
彼は構えた。

風が二度吹いた。
三度目の風に乗って、女性が一人姿をあらわした。
「Candy…」
そう呼んだ彼女をどこかで見たような気がした。
そう、鳥篭街だ。
「君を保護しに来た…」
「うるさい!お前なんか信用できるか!」
彼は戦闘態勢に入った。


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