飴玉感覚
13


彼は戦闘態勢に入った。
戦って勝たなければならない。
目の前の彼女を倒さなければならない。
そう思った。
しかし彼女は言う。
「攻撃はしないよ…」と。

彼女は言葉に違わず攻撃しなかった。
しかし、攻撃は全て受け流される。
以前と同じように…
逃げようにも逃げ道には彼女が配置しただろう目玉が取り囲んでいた。
「大人はみんなうそつきだ!」
彼は叫んだ。
「誰も、誰も信じられないんだ!」
偽ることのない、彼の叫びだった。

攻撃を何度も繰り出して…
彼はだんだん疲れてきた。
注意が散漫になり、攻撃の手が止まったその時、
彼にとって信じられないことが起きた。
彼女は彼を抱きしめたのだ。
「もう、大丈夫だから…」
腕の中、彼は泣いた。

「安心できるところへ行こう」

彼は今、海の中にいた。
あたたかい羊水のような空間だ。
誰も傷つけようとしない。
自分も傷つけない。
生まれる前の楽園にいる気分だった。
たまに彼女がやってくる。
外の情報は彼女がくれる。
いつかここを出ていくことがあるのかもしれないけれど…

今だけは…このまま…
彼はそう思い、また、まどろんだ。


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