斜陽街で逢いましょう
01


そこは斜陽街。
雑多で細い裏道のような場所。

たとえるなら商店街の裏。
配管や古ぼけた勝手口などが剥き出しになっていて…
その配管に顔を合わせるように開いている小さな店達。
ゴミゴミしているけれど、こんなところもあったのかと、
何かしら安心できるような…
或いは、その外見の秩序の無さに不安になるような…
斜陽街はそんなところだ。

ここは斜陽街に一つある探偵事務所前。
先程、この、開店休業中の探偵に何ヶ月…いや、何年かもしれない。
久方ぶりの依頼があった。
依頼人は女性。
探し人の依頼だ。

探し人は男性。
背が高く、がっしりした体格で…誠実そうな目をしている。
探偵はそう判断した。
こういった時の探偵の判断は間違っていない。
それでも仕事がないのは…
斜陽街に事務所を構えた所為かもしれない。

探偵はふらりと立ち上がると、ベージュのジャケットに袖を通した。
「まずは聞き込みかな…」
そう呟くと、宙を見詰めながら指を折った。
心当たりを追っているのかもしれない。
やがて一人で納得すると、助手に留守番を任せて出ていった。

私達は、彼の足取りを追ってみることにしよう。


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