斜陽街で逢いましょう
04
斜陽街一番街と二番街の交差する角にある占い屋。
探偵はそこに来ていた。
「ここのマダムは妖しい」
そんな妙な評判の立つ店だった。
一歩はいれば、オリエンタルな香の匂いがする。
白檀だろうか?
神秘的なヴェールで仕切られた部屋がいくつもある。
その仕切られたひとつひとつの部屋に、占い師が待機しているのだろう。
探偵を出迎えたのは、ここの占い屋のマダムと呼ばれる人物だった。
占いに使うであろう、金属製の針をちりんちりんとならしている。
泣きぼくろが印象的な女性だ。
「いらっしゃあい」
「…どーも」
探偵は、どうもこの人物が苦手だった。
以前、麻酔針をうたれかかれ、「コレクション」になりかかったのだ。
マダムは気に入った人物を麻酔で固めてコレクションする…
そんな噂を後日聞いた。
それ以来、滅多な事では訪れなくなっていた。
「おひさし、探偵さぁん。どうしたのぉ?顔色悪いわよぉ」
マダムが心配そうに覗き込んでくる。
コレクションされてはたまらない。
邪気はないにしても、危険だ。
探偵は早々に用を済ませる事にした。
「ひ、人を探している。こ、こ、こういう人物だ」
と、写真を見せる。
反応が無ければ立ち去りたいところだった。
「んー…知らないわねぇ」
「そうか、それじゃ…」
「まってぇ」
探偵は背筋が寒くなった。
「ねぇ、占いでこの人探してあげようかぁ?」
以前もそう言われた…そして…
「いや、いい!」
探偵は足早に去っていった。