斜陽街で逢いましょう
05
探偵は一番街の熱屋にやってきた。
熱屋は熱を売る店だ。
見れば、大きな球状のガラスの器に、直径3cm程度のオレンジのカプセルがたくさん入っている。
これを売っているらしい。
「いらっしゃいませ」
と、出迎えたのは、少女と女の間のような少女だった。
黒い髪に白い肌。
紅もささないのに色づく唇が妙に色っぽかった。
「今日はどのようなご用件で…」
探偵は少し見惚れそうになり、ぶんぶんと頭を振った。
「人をね、探しているんだ」
「ひと…」
「こういう人なんだけど…」
探偵は写真を見せる。
写真を見ると、熱屋は薄く笑った。
探偵は、嫌な予感がした。
「情報、あります。でも…」
「でも?」
「ギブ&テイク、です。あなたの温もりを少しだけ分けてくださいな…」
探偵は少し考えたが、
「死なない程度にしてくれよ?」
と、承諾した。
少女は探偵の胸の上に手をかざした。
一呼吸ほどの間に、胸と手の間の空間にカプセルが3つほど生じた。
これが熱屋の売る熱である。
このカプセル一つが、温度一度に相当するらしい。
儀式が終り、探偵はブルっと身を震わせた。
熱屋の少女はカプセルをガラスの器に仕舞うと、探偵の方に向き直った。
「約束でしたね。情報。その人、酒屋さんの近くで見かけました…」
「他には?」
「情報はここまでです。これ以上のものが欲しいなら…」
少女が悪戯っぽく笑う。
「いや、もういい。ありがとう」
探偵は礼を言うと、酒屋の方へと向かった。