斜陽街で逢いましょう
11


探偵は、扉屋にやって来た。
ここに来た理由は一つ、依頼されている人間の半分を見つける事。
半分というのがよくわからないが、きっと半分なんだろう。
探偵はそう思っていた。

壊れたアクリルの看板。
「扉屋」とある。
そして、木目も美しい入り口の扉。
探偵はそれを開けた。

中に入ると、様々な素材の扉が…鉄、木、紙など…ひしめきあっており、
なおも扉を作らんとする鑿の音が奥からしていた。
音の主は扉屋の主人。
神の啓示を受けて千の扉を作らんとする変人だ。
でも、実は千の扉を作るだけでは足りなく…
誰かが扉を開閉しないといけないらしい。
そうして開閉する際、「どこか」と、扉は空間を繋いでしまう。
その「どこか」が、この街以外だったりする訳で…
扉屋はそんな訳である種の危険地帯になっていた。

「何か開き、閉じてくれるのか?」
扉屋の主人が顔を上げた。
その顔には深い皺が刻まれている。
「いや、開閉に来た訳じゃないんだ…この男、知ってる?」
探偵は写真を見せる。
主人は写真を覗き込むと…店内の一角を指差した。
「このあたりで消えた…気がついたらいなくなっていた」
そういうと、また鑿を振るい出した。
そのあたりで目に付いたのは…
大きな鋼鉄製の扉。
まさかこの扉の向こうに行ったのだろうか?

探偵は自分の勘に賭けてみる事にした。
鉄の扉に手をかけると…扉はゆっくりと開いた。


戻る