斜陽街で逢いましょう
21
螺子師は再び螺子を求めて歩き出した。
行き先は二番街のペットショップ。
理想のペットを売ってくれるというが、
その実、理想のペットを手に入れたという情報を脳に送り、
その脳をコレクションしているという噂が立っている。
別の噂では、理想のペットと称してとんでもないものを売りつけているともいう。
とにかく、いい噂はない。
螺子師はそこにやってきた。
螺子の一本はずれたようなここの主人なら何か知っているかもしれない。
螺子師は扉を開けた。
扉には幼稚園に描いてあるような犬猫の絵が描かれていた。
しかし中には、犬猫はもとより、小鳥一匹おらず、
ただ、バレーボールが入るくらいのブリキの缶がずらりと並んでいた。
店内は静かで、不気味だ。
「こーんにーちわぁ」
不安をかき消すように螺子師はわざと大声で呼びかけた。
返事はない。
ここの主人は片目が虚ろな老人。
もしかしたら耳が遠いのかもしれない。
もう一度呼びかけようとしたとき、外から誰か入ってきた。
お客のようだ。
「実質、ここは廃業したんだ」
お客と思われる男はそう言った。
「何でも、客からクレームがついたんだ。部屋を侵食するペットを売りつけられたらしくてな…」
「部屋を侵食する?」
「壁に耳あり障子にメアリー。洒落じゃないぜ。本当に障子がメアリーというペットになったらしいんだ…」
「ふぅむ…」
螺子師は今一つよくわからない。
「ともかく、ここは実質廃業したんだ」
「そうですか…」
螺子師はペットショップを立ち去ろうとした。
「ちょっと待ってくれ」
客の男に呼び止められた。
「言い忘れてた。あんた螺子師だよな?」
「あ、はい、そうですけど…」
「伝言があったんだ。番外地の廃ビルに来い、と…」
「廃ビルに…」
あてのない螺子探し。
行ってみる価値はあるだろう。