斜陽街で逢いましょう
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斜陽街には番外地がある。
一番街・二番街・三番街…
それらに属さない人気のないあたりが番外地だ。
ゴーストタウン。
そんな表現が似つかわしいかもしれない。
螺子師はそこの廃ビルにやってきた。
手がかりがあるかもしれないからだ。

開きっぱなしになっているガラスの扉…窓は割れており、蝶番も外れている。
そこから中に入る。
コツ、コツ、と、自分の歩く足音だけが響く。

「やっぱり来たんだ」
前方から声がした。
螺子師には聞き覚えのある声だ。
「お前か!螺子ドロボウ!」
黒いマントをまとった男が柱の影から現れた。
螺子師は瞬時に戦闘態勢に入る。
愛用の十字レンチを取り出し、構える。
螺子ドロボウはそんな螺子師を見て微笑んだ。
「…何故笑う」
「いーや、毎度毎度職務に忠実だなぁと思って」
「このっ…」
螺子師が突進する、すうっと紙一重でかわされる。
「今日呼んだのは戦うためじゃないんだ。わかってくれるかな?」
少しの間があり…
螺子師はレンチを仕舞った。

「最近ね、扉屋の向こうに行く機会があってね…そこで奪った螺子があるんだ」
「…」
「あ、大丈夫だよ、代わりの螺子を詰めてきたから」
「お前が動くとトラブルの元になるから嫌だ…」
「そんな事ないって…で、君の探している螺子が、僕の詰めてきた螺子じゃないかなってこと」
「ゼロ螺子…」
「そうそうそれ。それを絵に埋めてきたんだ」
意志をつかさどるゼロ螺子。それを絵に埋めたということは…
その絵は意志を持つ…
対処法は…意志を別の螺子にうつし、別の螺子をゼロ螺子にしてしまう…
「お役に立てたかな?」
螺子ドロボウはくすくすと笑った。
「…ああ」
螺子師は憮然と言い放った。

「さぁて、螺子ドロボウに行こうかな」
螺子ドロボウはそう言うと、闇の中にすうっと消えていった。
螺子師は虚空をしばらく見詰めていたが、やがて、また螺子探しに歩いていった。


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