斜陽街で逢いましょう
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娘々は新聞社のサイトにいた。
ネットで起こる小さな事件から取り扱う新聞社だ。
ネット外では新聞を発行していない。
ネットで起こる事件は多すぎて、紙面におさまりきらないのだ。
娘々はそんな新聞社の過去ログを見に来た。
数としては膨大だが、娘々の手にかかれば検索も容易だった。

「某サイトで荒らし…Candyの仕業か?」
娘々はとある記事に目を留めた。
「この記事、信憑性は?」
「半々ってとこですね。Candyはあちこちに現れるから…荒らし主をCandyとしておけば概ねあたるんですよ」
「ふぅん…」
飴玉はいわれのない罪までかぶっているようだ。
多分、本人の知らないところで。

娘々は新聞社のサイトを出ると、大きく伸びをし、溜息をついた。
「夢渡っている場合じゃないのに…」
飴玉は危険のすぐ傍を落ちそうな勢いで走っている。
そんな印象があった。
いつかどこかで砕かれてしまうかもしれない。

或いは、彼も安息の場を求めているとしたら。
自分が安息の場になれないだろうか?
娘々はそこまで考えて首を振った。
拒絶されたではないか。
鳥篭街で拒絶された。

時刻は、深夜になろうとしていた。
娘々はいい加減疲れてきたので休むことにした。
飴玉も夢を見ている頃だろうか?
娘々はゴーグルをはずす。
シャワーを浴び、寝間着に着替え、
そうしてそのまま、ケーブルやコードに埋もれて眠る。

夢渡り。
誰かの夢を覗き見る。
今日はどこの誰の夢?
飴玉かじる彼の夢。


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