斜陽街で逢いましょう
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娘々は海に張り込みをかけることにした。
彼は海を目指していた。
密林と山道のサイトでそれだけはわかった。
ならば海を見張っていればおのずと彼に逢えるはず。
娘々はそう踏んでいた。

探すための目玉をあちこちに飛ばし、娘々は海辺に一人たたずんでいた。
膝を抱え、海を見詰める。
海は母の象徴という。
包み込むような母親。
海をめざす飴玉は、母に帰りたいのかもしれない。
娘々はそんな事を考えた。
そこまで思い付くと、娘々は遠隔操作でサーバーを一つ起動させた。
「どこまで海になれるかわからないけれど…」
娘々は自前のサーバーに海を作る気だった。
この海をコピーペーストしてもよかったが、もっと包み込むような海を作りたかった。

娘々が作業に没頭する。
女性は体内に海を抱えているという。
娘々も例外ではないはずと思っていた。
自分の海に彼を誘い込めないだろうか?
そうすれば誰も傷つかない。
飴玉も、他の人も。
娘々は信じていた。
飴玉は、人を傷付けることを好まないはず、と。

自前サーバーの海は随分出来上がった。
娘々はサーバーに飛び込んで海の感覚を体感する。
悪くはない。
そこまで確かめたとき、目玉から通信が入った。
八卦池からネットワークを介して、何かが海に向かってくると。
「来たみたいだね…」
今度こそ逃したくない。

飴玉ころころ転がった。
どこへ行く。
海へ行く。


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