斜陽街で逢いましょう
39
飴玉は戦闘態勢に入っていた。
そこまで自分が信用されていないらしい。
無理もないかなと娘々は思った。
これまであちこちで…自分が原因にしろ…迫害されてきた。
急に信じることは出来ないかもしれない。
だからせめて…
「攻撃はしないよ…」
娘々はそう言った。
娘々は一切攻撃をしなかった。
彼からの攻撃を全てかわすだけ。
それでも、逃げられないようにあちこちに目玉を配置させておいた。
「大人はみんなうそつきだ!」
彼が悲痛な声で叫ぶ。
「誰も、誰も信じられないんだ!」
娘々は黙って攻撃を受け流していた。
彼はだんだん疲れてきている。
目にみえてわかった。
そうして、彼の攻撃が止まったその時…
娘々は彼を抱きしめた。
「もう、大丈夫だから…」
彼はもう、抵抗しなかった。
「安心できるところへ行こう」
電脳中心にはサーバーが幾つかある。
そのうちの一つに、「夢海」という名前のサーバーがある。
ここには、一人の少年が漂っているという。
「保護に成功したみたいだね…」
妄想屋の夜羽がそう言った。
「ちょっと苦労したけどね…」
「これで夢渡りは傷つかなくなった訳だ」
「もう、大丈夫だよ」
娘々は微笑んだ。
聖母のように、微笑んだ。