テラコッタ色の屋根の下
02


こう見えてアキは学生している。
学費は親戚からと、パン屋のバイトから出している。
学ぶときに学べ。
そう言われたからだ。
いつか借金は返済する。そう心に誓っている。
キリエとは一つ違いで同じハイスクールに通っている。
キリエの方が年上だ。
ユキヒロは大学生で、ケイとイチロウは社会人だ。

早朝に起きて、パンの仕込みだけ手伝って…
学校に行って…帰ってきてまた仕事。
でも、週末だけは、仲間と演奏があるので空けてもらっている。

クロック・ワーク。
一応つけたバンドの名前だ。
いくつも時計を並べると、まるでリズムを刻むようだ。
そんなことを誰かがいって決まった名前だった。
アキは何となくこの名前が気に入っている。
みんな異議がなかった。みんな気に入っているのかもしれない。

週末になると、教会に集まる。
悪くない音響のホールである。
ここで、ビートルズなんかを練習したりする。
クラシックだったりもする。
流行りの曲だったりもする。
その時々によって様々だ。

そんな時、イチロウは妻のナナさんを連れてくる。
アキは少しだけ胸が痛んだ。
アキは少し前からイチロウが好きだった。
けど、誰にも言ってない。

ある時、キリエがナナさんと話しているのをみた。
キリエはナナさんが好きだった。
「ふられた」
と、カラカラ笑ったキリエがいた。
キリエは強いなとアキは思った。

どうしても辛くなったとき、アキには行く場所がある。
それについては別のお話。


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