テラコッタ色の屋根の下
12
テラコッタ色の屋根の下。日常がはじまろうとしている。
アキとキリエは学校に行く。
その途中、キリエが話し掛けてきた。
「なぁ…」
「うん?」
「ナナさんの失踪って何だったんだと思う?」
「…わかんない」
「そうか、そうだよなぁ…」
アキは何となく、絵の中に囚われていたナナをイメージした。
ナナに化けたバケモノに捕らわれたナナのイメージ。
合っているか間違っているかなんて知らない。
アキはそんなイメージをした。
バスが走る。
吊革が揺れる。
車窓からの景色は冬になろうとしていた。
「なぁ」
キリエが再び話し掛ける。
「何」
「あ、うん。教会、改装されるの知ってるかってこと」
「何、いつ?」
「もうすぐだと思うぜ。クリスマスには間に合うようにとか…どうとか」
その後の話は耳に入らなかった。
教会が改装されるということは、必然、ネズミ穴もなくなるということ。
彼とのつながりもなくなってしまう。
何か一つでも、彼と関わった証が欲しい。
何か、一つでも…
「おい、降りるぞ」
キリエにそう言われ、アキは考えを中断した。
その日一日、アキは彼と関わった証を考えていた。
そうして、プレゼントという答えに行き着いた。