テラコッタ色の屋根の下
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テラコッタ色の屋根の下。日常がはじまろうとしている。
アキとキリエは学校に行く。
その途中、キリエが話し掛けてきた。
「なぁ…」
「うん?」
「ナナさんの失踪って何だったんだと思う?」
「…わかんない」
「そうか、そうだよなぁ…」
アキは何となく、絵の中に囚われていたナナをイメージした。
ナナに化けたバケモノに捕らわれたナナのイメージ。
合っているか間違っているかなんて知らない。
アキはそんなイメージをした。

バスが走る。
吊革が揺れる。
車窓からの景色は冬になろうとしていた。
「なぁ」
キリエが再び話し掛ける。
「何」
「あ、うん。教会、改装されるの知ってるかってこと」
「何、いつ?」
「もうすぐだと思うぜ。クリスマスには間に合うようにとか…どうとか」
その後の話は耳に入らなかった。

教会が改装されるということは、必然、ネズミ穴もなくなるということ。
彼とのつながりもなくなってしまう。
何か一つでも、彼と関わった証が欲しい。
何か、一つでも…
「おい、降りるぞ」
キリエにそう言われ、アキは考えを中断した。

その日一日、アキは彼と関わった証を考えていた。
そうして、プレゼントという答えに行き着いた。


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