テラコッタ色の屋根の下
13
プレゼント…いろいろ考えたが、以前作ったパッチワークの熊の人形にしようと思った。
自分のよくまくバンダナと柄がよく似ている端切れで作った。
何となく、自分の妹かなにかのように思われ、キーボードの鞄にぶら下げたりもした。
だからこそ、プレゼントにその熊の人形を選んだ。
繋がりがなくなっても…
今の繋がりがなくなっても向こうで自分がいた証になってくれればいい。
そう思った。
改装は徐々に始っている。
壁にひびまで入ってきている。
一度壊すのだろうか?
そのあたりは詳しく聞いていない。
とにかく急がなきゃ。
現場の作業員の目を盗み、アキはいつもの場所へと急いだ。
「やあ」
「どうも」
いつものように会話は始る。
けれど、いつこの壁を壊す作業が始るかと思うと、おちおちしていられなかった。
会話が自然弾まなくなる。
どうにかしなくちゃ。
彼女は焦っていた。
「これ、受け取ってください」
先に沈黙を破ったのは向こうからだった。
ネズミ穴を通り抜けて、拙い包みが届く。
「螺子ぼーず、僕のお守りです」
彼からは、螺子ぼーずというかわいらしい人形をもらった。
あくまでアキの角度から見てかわいいものなので、他人はどう思うかわからない。
「ありがとう…僕からも贈り物あるんだ」
アキは長年一緒にいた熊のぬいぐるみを穴に入れた。
嫁がせるってこういう気分なのかなと思った。
「あ、ありがとうございます!」
向こうは喜んでくれたみたいだった。
これで最後じゃない。
向こうには向こうの生活。
こちらにはこちらの生活。
それぞれを生きていくだけのこと。
思いが交差した証。
プレゼントはそういうものなんだとアキは思った。
数日後。
教会の裏庭は小ぢんまりとしたハーブ園になっていた。
ネズミ穴なんてない。
それでも螺子ぼーずが教えてくれている。
ナナの事件も、ここで話したことも…全て、真実だったと。