白の空
02
彼は目覚めた。
そこには天井があった。
多分自分は寝かせられている。
不快な場所ではないという事は、一応寝具の上なのだろう。
そこまでを判断したとき、物音がした。
『だれだ』
飛び起き、叫ぶ。
が、声がかすれて出ない。
物音の主は困ったように彼を見た。
白い髪の幼い顔の人物だ。
「手術のあとなんだ。安静にしなきゃだめだよ?」
『手術?』
疑問は顔に出たようで、白い髪の…ギアビスが続きを説明する。
「君はここの外に倒れていた。で、片腕と片目…身体のあちこちを失っていた。ここまでわかる?」
彼は黙っている。
声がでない所為だけでなく、口を真一文字に結んだまま、黙って聞き入っている。
それを見て、ギアビスは続ける。
「僕は君をここに担ぎ込んでサイボーグ手術した。僕の家系にそんなことを研究した人がいてね…知識には事欠かなかったよ」
ギアビスはことも無くさらりと言ってのけると、ふわりと笑った。
「まだ、声は出ないでしょ?」
ギアビスはベット端に腰掛け、彼の顔を覗き込む。
手術した云々よりも、個人的に「他人」に興味があるようだった。
彼は声がでないという事を頷いて肯定した。
「無理しないでね。あ、そうそう…」
立ち上がりかけたギアビスが座り直す。
「名前、教えてよ」
彼の手を取り、自分の手のひらに人差し指をあてさせる。
書けという事らしい。
そこまできて彼は思い当たった。
『わからない』
彼には記憶が無かった。