白の空
08


レオンは意外と驚かなかった。
薄々感づいていたのか、または、翼があまりにも似合っていたのか。
そのあたりは定かではない。
とにかく、ギアビスは翼を持っていた。
出したり引っ込めたり出来る何とも都合のいいものだ。
しかしギアビス曰く、
「僕が欠陥品だから、そんな事が出来るんだ」

「欠陥品?」
レオンが聞き直した。
「そう、欠陥品。僕は天使じゃないから引っ込める事が出来る。人じゃないから翼がはえてる。そして飛べない。どっちにしろ欠陥品なんだ」
レオンは黙った。
何か言おうとして、黙った。
ギアビスは続ける。
「これはね、しばらく一緒にいた祖父がつけたものなんだ…」

なんでも、ギアビスの祖父は天使を作りたかったらしい。
汚れなく、崇高な存在を、作りたかったらしい。
ターゲットにされたのは、幼かったギアビス。
ギアビスは改造された。
祖父に言わせれば改良だったらしい。
それ以来、ギアビスは髪は白くなった。
そして、不要なものとして、性別さえなくなった。
祖父が死んで、奇妙な自分だけ残って。
空と岩と草原と、膨大な知識の島で…ギアビスは何を考えて過していたのだろう。

「いつか…この身体を戻せる奇跡が起きないかと思っているんだ…」
レオンは黙っている。
ギアビスは続ける。
「君があわられた日から…そんな奇跡を探してる」
レオンは聞きたかったことを尋ねた。
「空に…焦がれるのは?」
「空、空はね…可能性…。この空を飛べたら、奇跡の一つも起こる気がしたんだ…」
「そうか…」
「…レオンと、一緒なら…もしかしたら、と、思ったんだ…」

何故一緒に空を駆けたいのか。
何故一緒でなければいけないのか。
彼等はその理由に気がついていなかった。


戻る