白の空
11
ギアビスはレオンが大好きだった。
だから何も言わなかった。
言えなかった。
レオンがここの世界の住人でない事はわかっていた。
扉の前に倒れていたから。
それはびっくりした。
この島に自分以外の人間がいるなんて、と。
しかし…それを生かそうと、本人の意思を無視してサイボーグにしたのは…
驚き以上に、寂しさがあったのかもしれない。
誰かがいて欲しかった。
自分を改造してもいい、どうしてもいい。
傍に誰かいて欲しかった。
誰でもいいと思っていた。
傍にいてくれるなら、誰でもいいと思っていた。
それでも今では、レオン以外いらないと思っていた。
優しいから。
自分を求めてくれるから。
ギアビスは知っていた。
レオンは自分を求めている。
多分、欠陥品の羽根を。
こんな羽根でも、飛べない羽根でも、求めてくれるなら、改造した祖父にも感謝する。
欠陥天使。
それでもいい。
寂しくないんなら、それでもいい。
それでもレオンは行ってしまった。
楽しかった記憶を残して。
「レオン…」
ギアビスは鋼鉄の扉に呼びかけた。
鉄の扉は何も答えなかった。
ギアビスはレオンが大好きだった。
だから何も言わなかった。