白の空
12
レオンが行って。
扉が閉まって。
ギアビスはレオンが帰ってくることを信じて家に戻った。
レオンがいようがいまいが、家事はあるのだ。
自分は生きている。
生きている以上、生活がある。
たとえこの島に生活感が薄かろうとも。
自分は生きている。生活している。
待っているだけでは生きていない。
ギアビスはそう、割り切った。
レオンが行ってから少し経って、島に珍客があらわれた。
黄色のサロペットに黒のシャツ。どこから見ても作業着だ。
髪は脱色したような金。そして、前髪だけ伸ばしていて黒い。
大きな目は、すこし、きつめだ。
自称螺子師。
それが彼の自己紹介だった。
「僕の街の人から聞いたんですよ。螺子使う人がいるって…」
螺子師は自己紹介のあと、キョトンとしているギアビスにそう言った。
「扉くぐるのは勇気要ったんですけど、中から誰か出て来たので、安全かなと思って、来ちゃいました」
「レオンだ…」
ギアビスは知っている。
「知り合いの方ですか?」
ギアビスは頷く。
「うん、とっても大事な人」
螺子師は螺子を扱うのが仕事。そう言っていた。
ギアビスは初めこそびっくりしたが、これからはいろんな人が来るのだろうと螺子師が言うと、喜んだようだった。
「いっぱい、いろんな人と話したい」
ギアビスは笑った。
「で、僕は商談に来たんですよ。僕のところで扱っている螺子を買っていただけないかと…」
「ん、お茶しながら話そうよ」
彼等は打ち解けたらしい。
不思議な匂いのするギアビスのお茶。
彼等の話は大いに盛り上がったという。