白の空
13
レオンは扉の向こうから帰路に付いた。
鉄の扉を開き、草原と岩の島に戻ってきた。
ここにあるのは、それらと、風と…
ギアビス。
無性にギアビスに逢いたかった。
欠陥と言われた天使。
そう、探していたのはそんな天使だったのかもしれない。
自分は、片方を切り捨てる事の出来なかった男だ。
大切な人、そして、天使。
両方手に入れようとした。
そして自分を半分に割いた。
半分は…大切な人の手に無事届いた。
思い残すことは何もない。
自分はただここに帰ってくればよかった。
草原を黙々と歩く。
旅立ったと思ったのは数時間前だったか。
太陽は高く上り、空は青々と冴えていた。
風が強い。
この島はいつもそうだった。
…大丈夫。この島の記憶は失われていない。
レオンはそうしていくつも確認した。
出会った日のこと。
空の果てに奇跡を見出した日。
ギアビスのこと…
歩きながら、一つ一つ繰り返し思い出す。
脳の皺をたどるような作業。
それがギアビスの家まで続いた。
扉がある。
家の扉が。
開けばきっと、彼がいる。
おのれを割いてまで求めた半身がいる。
今日、全て話そう。
そうした上で、ずっと求めていたと伝えよう。
レオンは、扉を開けた。
新しい日々がはじまる。