君は鳥篭屋を訪ねた。
がらがらとガラス張りの古臭い扉をスライドさせて、君は店内に入った。
店内には、蛍光燈が光っており、皎々と、編まれた鳥篭達が照らされていた。
中に鳥はいない。
静かに…時折明滅する蛍光燈のピラピラという音をのぞいては、
静かな店内であった。

「お客かい?」
おばあさんとおばさんの間のような女性が奥から顔を出した。
女性はサンダルをつっかけると、ツカツカと君の方へ歩み寄ってきた。
「お客かい?」
鳥篭屋のおばさんは再度訊ねた。
君は素直に夜羽の妄想テープを探している途中に、ここに入ったという事を告げた。
「夜羽ねぇ…あたしのところの商品を妄想にした若造でしょ」
どういう事なのか、を君は聞き返す。
「妄想屋に鳥篭って妄想置いてあるでしょ?あのお話はあたしのところの商品を買ってくれた人のお話なんだよ。だのにあの若造ったら、妄想として置いておくんだもの…」
ふんっと、溜息とも鼻息ともつかない息をおばさんはもらした。
「あたしのところの鳥篭は特別製だよ。どんなものでも家に戻れる優れもの。篭の鳥も逃げていかずに鳥篭に止まりたがるという代物さね。どうだいあんた。一つ、買っていかないかい?」
おばさんが商売を始めてしまった。
「ほらほら、こっちのなんかもインテリアとしても十分奇麗だからさ…竹の鳥篭はオリエンタルだっていうから、最近では海外のお客も多いんだよ…」
こうなると、おばさんパワーは止まる事を知らない。
君は適当に理由をつけて、鳥篭屋を後にした。


ディープの路地に出る