君は酒屋の主を探した。
容姿風貌の情報は得ていないが、酒瓶を持っていればそれだろうと、安直に考えていた。
君は扉屋の裏口から出てきた斜陽街のディープのそのまたディープを歩いた。
ゴミが雑多に詰まれ、猫がそれをあさっている。
うっかりある猫のしっぽを君は踏んでしまった。
猫はしばらく敵意をむき出しにしていたが、やがて、興味を失ったように去っていった。
カラン…
と、硝子の触れる音がした。
「きぃつけや。この辺は猫がぎょうさんおるさかいな」
青年は君とは逆方向に向き直ると、
また、カランと音がした。彼の引っかけているディバッグの中からだ。
「さて、あとは神屋はんのお神酒やな…」
お神酒?彼が酒屋なのだろうか?
そのことを問うと
「せや、ワイが酒屋の那刃斗(ナハト)や。ワイになんか用か?」
君は妄想テープのあらましを酒屋に話した。
「夜羽もドジやなぁ」
酒屋の青年は呵呵とひとしきり笑ったあと、
「今から行く神屋がめっちゃあやしいねん。来るか?」
取り合えず君はついていく事にした。
神屋というその店よりも、酒屋の青年の方があやしいと思いながら…
神屋へと向かう