「ペットを見たいか…それにはちょっとしたコツがあってな…」
老人は皺だらけの手で壷を一つ持ってきた。
「見ていたまえ…」
老人はマスクをした。そして、壷に手を入れ、手を出した。
手には、白い気体が握られていた…が、やがて、手は開かれ、気体は店内に拡散した。
君は気体の向こうでブリキの缶達が、生き物に変貌していくのを見た…

「望みを叶える手段を知っているかね…望みは叶ったと脳に認識させればいいのだよ…」

老人の声が聞こえた気がした。

そして、大きな物音。
「くそじじい!なんてもの掴ませてくれたんだ!僕の部屋が彼女になってしまったじゃないか!」
神経質そうな若い男が扉を開けた…までは認識できた。

気がつくと、君はペットショップの店の前にいた。
ペットショップのシャッターは閉まっており、中の様子はようとして知れなかった。
「やっぱクレームがついたか…」
誰かが通りかかってペットショップのシャッターを眺めていた。
君はこのペットショップの経緯を尋ねた。
「ここはな、人間の脳に嘘の情報を流し込んで、商売してたんだ…ペットが手に入ったという嘘の情報をな…情報を注入された客の脳髄は、ブリキの缶に詰めて、幸せな夢だけを見るんだ…ただ、時たま、とんでもない生き物を売りつけたりする事もあったらしいな…マリーとかメリーとかいう名前だったとか…」
君もブリキの缶にされるところだったのだろうか?
それはわからない。


気を取り直し、斜陽街を歩く