違法磁気売買


ウゲツとネココはいつものように磁気を掃除する。
動力機に磁気をためているのだが、
最近ネココがいる所為か、どうも磁気の減りが早い。
掃除をしてもしても磁気が減る。
ウゲツの収入がちょっと落ちる。
ウゲツはちょっと困る。
もともと、天狼星の町は、ものすごくお金が必要なわけではない。
ガラクタのように、お金を植物園に使っている人もいるけど、
ガラクタは天狼星の町の外でお金を稼いでいる。
図鑑を出したりしているわけだ。
ガラクタのような人は特殊として、
ウゲツは日々の稼ぎで、お粥と機器の手入れをする以外は、
いわゆる嗜好品もない生活をしている。
ウゲツはそんな風だから、特別お金に困っているわけでない。
ただ、天狼星の町の一員でありたい一心で、
ウゲツは掃除をしている。

ネココを追い出すという選択肢はない。
ネココはどこにもいけないし、
ウゲツはそれだけはいやだと、まず頭から思っている。
ネココがいる、磁気が減る。収入が減る。
ならば、と、ウゲツは思う。
……違法磁気売買なら。
高額で磁気を買い取るギムレットは、
小遣い稼ぎの磁気掃除人の子供達の中でも噂になっている。
電気街に店を構えていて、
違法なことに使う磁気を集めている奴だと、
恐れをともに語られている。
高額で売れるという、それがウゲツを悩ませた。

ネココを、やしなっていく。
ウゲツはそんな単語が自分の中にあったことに驚いた。
そして続けて、
それは、まるでネココがお嫁さんみたいだなと思って、
ウゲツの思考はちょっと停止した。
お嫁さん。
ウゲツは自分の部屋にいるネココをじっと見る。
ネココはハコ先生から借りてきた本を読んでいる。
お嫁さん。
きれいなネココ。
どこにもいってほしくない。
違法なことに手を染めたら、ネココは悲しむだろうか、軽蔑するだろうか。
ウゲツはそれはいやだった。

ウゲツはうんうんうなる。
悪者になりきれない自分が、心底面倒だと思った。


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