住人


ロックはクーロンの町のアパートの近くにやってきた。
ロックはクーロンズゲートの思い出を探している男。
クーロンズゲートの世界が再現されていることを望んで、
このクーロンにやってきた。

この町はクーロンズゲートと似ているようで違っていて、
それでいてそっくりだ。
でもやっぱりなんか違うと、
ロックはこのクーロンにやってきてから何度も唱えた。
違う。違う。
言っているのに、この町を巡ることを止められないでいる。
いつか風水師に、メールが来ていると言いたかったり、
不機嫌そうな路人よりも、
やっぱり店やらなにやら持っている、
怪しげな店主とか、バーのあの人とかを目指している。

歩き回って気がつく。
ロックはすでにこの町にどっぷりつかっている。
沼とか蜘蛛の巣とか蟻地獄とか。
そういう言葉を連ねてみても、
クーロンに捕まったのなら、それはそれでしょうがない。
ロックはどこかあきらめている。

そうして、迷ったロックがたどり着いたのは、
アパートの近くだった。
店を出しているわけでないけれど、
ここに部屋をもてたら、ちゃんとした住人かもしれない。
夢にまで見たクーロンの住人。

汚れの憧れ。
前の住人が残していった染みすら愛おしくなるかもしれない。
そう、ロックのクーロンは、まだ始まったばかりなのかもしれない。
クーロンズゲートの思い出は通過点に過ぎず、
クーロンで再び始まる。
ロックはこのクーロンで再び、クーロンを始める。
今度は自分が怪しげな住人だ。
さぁ、風水師にはどんな言葉をかけようか。


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