テレビヒーロー


「毎週日曜日、朝8時!○○チャンネルで、チェンジ・イン!」
とあるテレビヒーローのCMが流れる。

ヒーローはいわゆるイケメンで、
悪人をばったばった倒していく。
スタントを使わないことがウリらしい。
華麗に繰り出すアクション。
必殺技こそ、CGで特殊効果を出しているが、
迫力のあるアクションが、ヒーローから繰り出されていた。

そして。

「カット!」
撮影現場監督から声が飛ぶ。
ヒーローはふぅとため息をつき、演技から戻った。
「お疲れ様です」
などとあちこちから声がかかる。
ヒーローはスポーツドリンクを少しだけ飲む。
そして、スケジュールを確認する。
と、そのとき。
ヒーローの携帯に着信。
ヒーローは携帯の画面を見ると、
テレビヒーローとは違う、真剣な顔つきになった。
「ヒートアップ号、借ります!」
ヒーローは現場に言い残し、
風のように、ヒートアップ号というバイクに乗り、
すばやくヘルメットをかぶって、疾走していった。

「まるでヒーローそのものだな」
「それがウリなんですよね」
現場はいつものようにヒーローを見送った。

そして…

とある廃工場。
ヒーローはいた。
人間と動物の中間のような、モンスターのようなものを相手にして。
「チェンジ・イン!」
ヒーローが叫び、変身をする。
ヒーローは、防御にも機動力にも優れたモードにチェンジする。
それはまるでテレビヒーローの姿そのものだった。
モンスターが突撃する。
ヒーローは華麗なアクションでモンスターをかわす。
「これは、まだテレビで流れてないけどな!」
ヒーローは武器を構え、
「モード・アッパー・タイフーン!」
叫び、武器を突き上げ、エネルギーの渦を作り出す。
モンスターは突き上げられ、
エネルギーの渦で、消滅した。
「…再来週流れる予定だ。一足早く食らったな」
聞いているものは、誰もいなかった。

「さぁ、現場に戻るか」
ヒーローは変身を解くと、
ヒートアップ号に乗り、また、現場に戻っていった。

「毎週日曜日、朝8時!○○チャンネルで、チェンジ・イン!」
とあるテレビヒーローのCMが流れる。

ヒーローの本当の姿は、
知らないようで知っている。


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