かごめかごめ


「かーごめかごめ」
どこかから歌声が聞こえる。

篭を背負った人の列が道を行く。
質素な着物をまとい、
村の道を、ゆっくりと。
赤い着物をきた少女が、
手に花を携えて、
篭を背負ったものの、その篭の中に、
無邪気に花を入れていく。

「かーごめかごめ」

少女は歌う。
篭に花を入れながら。
人の列は足を止めない。
少女はまるで、
蝶のように人の列の周りを舞う。
ともすれば少女が蝶に見える。
七色の蝶に。
それでも、少女に見える。

人の列は村を行く。
篭を背負ったまま、
民家もまばらなその村を。
篭には花が満ちていて、
少女の手には、まだまだ花がある。
赤、橙、青、黄色、紫。
少女は篭に花を満たしていく。

やがて人の列は、篭を背負ったまま、
ある家の前を通り過ぎる。
ふっと、篭から花が消える。
人の列はそのままいずこへともなく去る。

少女が、その家の前に立ち止まる。
おびただしい花の中、
いまだ、花を持って。

「うしろのしょうめん、だーあれ」

少女は、花を放った。
花は空で蝶に変わり、
少女は消えた。


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