たより


ハミルの便りは、白いオウムにくくりつけてやって来る。

誰もいないここで、
私はハミルの手紙をもとに、
世界を構築する。

私は、南のほうの無人島にいるのだそうだ。
南のほうは暖かく、
穏やかに過ごせるらしい。

ハミルはそこに、白いオウムで便りを出す。
私は手紙を読むと、世界を再構築する。
椰子の木があるらしい。
椰子の日陰は心地いいらしい。
私は世界に椰子の木を追加した。

私はどこにいるのだろう。
わかるのは、ハミルがここに手紙を出すことだけ。
私の足場は、
ハミルの手紙で出来ている。
私の世界は、
ハミルの文字で出来ている。

ハミル、ハミル。
いつか世界が君にとって心地よくなったら、
この世界に来てくれないだろうか?
白いオウムも一緒に、
君のくれた海と、
君のくれた空と、
君のくれた太陽と、
私と、君と。
この世界は、君がいて完成するんだ。

ハミルからの便りが来る。
白いオウムにくくりつけて。
私は南の無人島で受け取る。
今度はどんな世界だろうか。

扉が閉まる音がする。
私の世界は、まだ始まったばかりだ。


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