闇の子


あなたは闇を抱えている。
それがとても痛むのね。
明るみに出ると、とても痛むのね。

あなたは他人が怖い。
何を言っているのか理解できないし、
何をされるかわからない。
得体の知れないもので、
手を差し伸べられるのがとても怖い。
あなたの心を引っかくようで、
差し伸べられた手を拒絶することしか出来ない。

理解できるかは、わからないけれど、
あなたの闇はとても優しいのでしょう。
心を全て飲み込んでもなお、あなたをすっぽり包み込む。
あなたの眼が語っている。
ここから出さないでと。
痛みのもとに引きずり出さないでと。
何もない真っ暗闇。
それがあなたの落ち着く場所なのでしょう。
そして、光に出すと闇が痛む。
明るみにさらされると痛む。
そうなのでしょう。

闇のように夜のように、
包み込むことなど出来ない。
隙間だらけで包むことしか出来ない。
私は不完全な生き物だから。
あなたの愛する闇のようには、
私はそんな風にはなれない。

あなたの眼はとても美しい黒。
闇に愛された色。
闇を愛した色。
私がいくらかかっても届かない色。
手を伸ばしても、走っても、愛しても、
私には届かない色。
あまりにも一途に闇を見ている色。
どこまで行けばあなたに届きますか?

あなたは生きても死んでもいない。
人でも物でもない。
闇に愛されている。
暗がりが、あなたの心のありか。
私はかなわない。
わずかな光になって、あなたに痛みを与えてしまう。

今夜もあなたに闇が下りる。
おやすみ、人でも物でもないあなた。
あなたの心に果てのない闇を。
そして、安息を。


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