眠る音


言葉の海に眠る音。
そんなことを思いつく。

所詮、この海は言葉に過ぎない。
この陸も、この海も、この空も、
プログラムとか呼ばれる言葉の生み出した、
言葉の結晶に過ぎない。

この海には音がない。
この風にも音がない。
ただ、感じるだけ。
この世界があるのだということを、
ただ、感じるだけ。

音はどこにあるのだろう。
言葉は音を作り出せなかったのだろうか。
否。
音はある。
この海の底に音はあるはず。

僕はそれを感じる。
この陸の終わりから踏み出せば、
海の底に眠る音があるはず。
眠る音を呼び起こして、
僕はその音とともに、歌おう。

歌が、ある。
音を解き放って、歌を重ねよう。
言葉の結晶もそうすれば輝くはず。
この世界が生きるはず。
音楽はあるはず。
この海の底に、
この心の底に、
音楽はあるはず。

プログラムの世界かもしれない。
でも、その中で眠っている音があるはず。
解き放てばどこでも歌える。
どこだって、ステージになる。

陸から踏み出そう。
海の底に、音が待っている。
言葉で編まれた海の底に、
眠る音が、目覚めを待っている。


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