繰り返される
歌が聞こえる。
何度も繰り返される歌。
古びたバーにやってきて、
止まり木に腰掛けて、
歌が繰り返されるのを聞いている。
ラジオでも有線ですらないのだろうか。
壊れたように繰り返される歌は、
安らぐようであり、不安を掻き立てるようでもある。
あるいはこの歌は、
このバーに染み付いてしまった歌なのだろうか。
音源を介することなく、
ただ、この場にいるものが聞くことのできる歌。
何度も繰り返される、
このバーの物悲しい歌。
歌は何を見てきてこんな歌になったのだろう。
歌は何を聞いてきてこんな歌になったのだろう。
この場がそうさせる歌であり、
歌がこの場を完成させる。
一人、酒を飲む。
一人の酒。
そして、歌さえあればこの場はもう何も要らない。