列車が行く
どこかにあるかもしれない、
ないかもしれない列車。
その列車はサトウキビ畑の続くところを走っている。
見渡す限りサトウキビの中を、
がたんごとんちんちんと列車は走る。
一両編成だ。
どこから動力が来ているのだろうか。
電線はどこだろうか。
考えてもしょうがないことなのかもしれない。
ここはそういうところなのかもしれない。
女の子は、列車の席にいる。
一両なのにそれでもがらがらの列車。
この列車はどこへ行くのだろう。
女の子は考える。
でも、甘い砂糖の味がとけるように、
考えもふわりととけてなくなってしまう。
どこへ行くのだろう。
気持ちいい余韻だけを残して、
サトウキビ畑の中、列車は行く。
がたこんがたこん。
旧式っぽいその列車は走る。
女の子を乗せて、
窓を開ければ砂糖のにおいがするような気さえした。
サトウキビは女の子をふわふわと包むように、
優しく風にそよいでいる。
サトウキビの海だと、不意に女の子は思う。
聞こえる音は潮騒かな。
列車はどこだっていくよ。
甘い香りを連れて、どこだって。
やがて女の子は眠る。
お菓子なんかよりももっと甘い、
心地いいなにかの夢を見る。
サトウキビ畑を、列車は、行く。