花色の空
蔦の絡まる望遠鏡をがある。
三脚はすでに根を張っているかのように動かない。
望遠鏡は視界さえ動かせない。
ただ、あるべき空をじっと見ている。
ここがどういう場所であるか、
あまり説明する必要はない。
遺跡と思えばそれでもいいし、
望遠鏡がオブジェと思うならそれでもいい。
ただ、空の一点だけを見つめ続けている望遠鏡がある。
覗き込めば見える。
すぐそこにあるかのような、
楽園の色彩。
空とはこんな色を内に秘めていたのかと、
今までこんな色彩を素通りして、空色と思っていたのかと、
それは花色。
百花繚乱の花を、
いつまでも空が抱いている。
望遠鏡は、花色の空を見つめている。
その空は望遠鏡の夢かもしれない。
覗き込むことで、あなたにも望遠鏡の夢が伝わるのかもしれない。
望遠鏡は楽園を見出した。
それは遠い空にありながら、
望遠鏡だから手に入れられた、色彩。
花色の空は美しく。
花色の空は限りなく。
特別なことなんて何もいらない。
この空のどこにでも花が咲いている。
動かない望遠鏡は、
花色の空を見ている。
眠るように。
夢見るように。
花色の空の下、
望遠鏡は、動かない。