偶像って職業
僕は職業アイドル。
とりあえずぞろぞろ束にして売り出す、
そんな芸能界で何とかやってるアイドル。
僕も束のうちの一人で、
いまいち一人では輝ききれない。
寄せて集めてへらへら笑ってる。
バカだと思われているだろうな。
でも、バカを求めているのは、
僕じゃないんだ。
僕は演じているだけ。
偶像を演じるのは僕の役目。
愚か者で顔がいいだけ、そんな風に見えるのなら、
とりあえず事務所の方針は間違っていないということだ。
事務所の方針はともかく。
僕は頭の後ろからたまに声がする。
本当にやりたいのはそれなのか。
夢はもっとたくさんあっただろう。
愚か者とののしられて、何が楽しい。
僕のやりたいことはなんだろう。
笑顔を作ること。
平和だと感じさせること。
生きててほしいこと。
並べてわかるきれいごと。
でも、僕にきれいごとを実行できるほどの力もない。
僕は笑うだけの愚かなアイドル。
僕はもっとやりたいことがあった。
すべてを捨てて、愚か者の偶像になり果てた。
期限付きのアイドルという職業。
本当になりたかったのは、
なんだったんだろう。
愚か者にはわからない。
僕は笑いながら泣く。
みんなが大好きで、
みんなに笑顔でいてほしくて、
僕は何もわからなくなっちゃったけど、
きれいごとの一つも実行できない僕だけど、
僕が死んだら、愚か者が一人いなくなったと、喜んでくれるかな。
最近そんなことを考えてる。
偶像という職業。
僕には荷が重すぎるなと。
ようやく気が付いたんだ。
すべてをなくしても。
みんなのことが大好きです。
結局、僕にはそれしかなかった。