やわらかい世界
やわらかい世界に私はいる。
多分どんなにネットワークが広がっても、
私を包む世界は、まだ、やわらかいのだと思う。
毛布とか、羽毛とか、そういったものに近い、
やわらかい世界。
まだ狭い世界しか私は知らない。
生まれたばかりの赤子と、あまり大差ないのかもしれない。
やわらかくあたたかい世界にいると、
そんなことを思う。
いろんなものを経験し、
いろんなものを見てきたかもしれない。
何年かは生きてきた。
それを否定する必要もないけれど、
ただ、感じるのは、
世界がやわらかいということ。
まだ、傷つけるような何かの存在も、
私は知らないのかもしれないし、
あるいは、知っていても見ないふりをしているのかもしれない。
このやわらかい世界で私はまどろみ、
夢見るように日々を過ごしている。
忙しいということも、
もしかしたら、夢の一部なのかもしれない。
経験は本当に経験なのか。
夢の一部にすぎないか。
やわらかい世界の微睡に過ぎないのではないか。
多分私は何も知らない。
やわらかい世界の外のことも、
自分が何者かさえも。
真実は知りたいものが知ればいい。
私はもう少し、やわらかい世界でまどろんでいたい。
ここは、この世界は、
やわらかく、あたたかい。
涙が浮かぶほど、いとおしい世界だ。