風の向こう


永遠は風の向こうにあると、あなたは言った。
風の向こうとは。
日によって時間によって、
季節によっても風の向きはころころ変わる。
そして、その向こうなんて。
果てのないその先のようなものだ。
永遠なんてないとあなたは言いたかったのか。
あなたは笑って、
違うよと言う。
風の向こうに永遠はあるんだ。
この風を追いかけていけば、
永遠に会えるんだ。
私は理解できない。
まるで永遠が生き物か何かのように。
或いは、人物か、
或いは、遠い友人かのように。

永遠とは。
あなたといろいろあって会えなくなってから、
永遠というものについて時折考える。
空は、山は、風は。
私の命が感じる限り、永遠に近いかもしれない。
山が崩れるほどの時間を、私は生きてはいないだろう。
宇宙とか、惑星とか、
そんなものまで意識は行かない。
私はちっぽけな家に住んでいて、
永遠とは程遠い一日を過ごしている。

あなたは風の向こうを今でも信じているのだろうか。
或いは、
私と交流がなくなったそのあと、
風の向こうに行っているかもしれない。
永遠と会えたかもしれない。
それは、あなたが永遠になることではなく、
あなたが永遠と会えた、それだけ。
風の向こうにあるという永遠。
それは、旅の果てに見つけるような気もするし、
ある日突然出会える気もする。
風というものの姿がつかめないせいかもしれない。

あなたはどこにいるだろう。
あなたは遠い友人。
外を吹くこの風は、
永遠まで届かなくても、
あなたまで届けばいいなと思う。
この風の向こう、
あなたを笑顔にできる風が吹けばいい。
この風の向こう、
あなたがいればいい。

ああ、
そういうことなんだ。


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