君は草原を駆けていった。
呼んでいる…呼ばれている…
小さな家が近づいてくるとともに、君のそれは確信になった。

「何してたんだよ…遅いじゃないか」
一人がピーナツを飛ばして器用に口に放り込んだ。
「食うか?」
君はすすめられるままにピーナツを食べた。
思い出してきた…ああそうだ、君はここに来て…
「今日はちょっと遠くまで行ってみようぜ」
そう、この仲間達とどこかに出かけるはずだったのだ…
「海がみたいな…火山灰はまっぴらだしよ」
「ああ、火山灰はごめんだな」
みんなは笑った。何がおかしいのかわからないが、笑った。
「眼球のワイヤーなんかに負けるな!僕達は強いんだ!」
仲間たちはエイエイオー!と、掛け声をかけた。

「開け放たれたままか…向こうの住人になってしまったのだな…」
老人は鑿をふるう腕を止め、重い鉄の扉を閉めた。

斜陽街への扉は閉ざされた。もう、戻れない。
君のこの街での役割は『別世界の住人』に決定をした。
もう、この街の人間ではありえない。君は君の居場所を見付けてしまったから…
扉の向こう…永遠の緑の世界へ…

THE END


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