君は玉虫色の扉に手をかけた。
扉屋の老人が顔を上げた。
「そこは、ここの裏口でな…酒屋も神屋の近道だとかのたまって、ずかずかとそこを使う始末だ…まったく…困ったものだ…」
君はためらわずに扉を開けた。
君の探している妄想テープの手がかりを持った人間がこの向こうにいる。
「なんだ…お前も近道を使いたがったクチだったのか?まったくキョウビの若い者ときたら…」
老人はぶつぶつ言いながらまた、鑿をふるいだした。
君はとりあえず一礼すると、扉の向こうに足を踏み入れた。
まごうことなき斜陽街だ。空気の流れがそう伝えてくる。
酒屋の主という男を探す。