電装脳のチャイ


最近電鬼が良く発生すると、チャイは報告を受け取った。
チャイは電気街中心の老頭の三人のうちの一人。
他に、クロックと、タケトリがいる。
その三人で電気街中心の会議の最高責任を取っている。
チャイは、カミカゼと署名のあるそれを、もう一度見て、
秘書に書類を回すように命じた。
決定は迅速でないといけない。
書類が回った際に、どんな決定を出すべきか、
チャイは計算を始める。
チャイの脳は、電装がなされている。
電装がなされていなければ、決定が迅速にできない。
悩んでいる間にも案件が増え、
住民の悩みが増えてしまう。
チャイはそれを考え、考え抜いた挙句、
秘密裏に脳を電装にした。
一見しただけではわからない。
それもそのはず、一流電装技師のギムレットの技だ。
電気を使うこともなく、ある程度の磁気で電装脳を動かすことができる。
電装脳は悩まない。

やがて、報告を受け取ったクロックとタケトリがやってくる。
三人で意見を交わす。
タケトリは、ゆっくりと話す。出て行く言葉が責任を持っているように。
クロックは話をじっと聞いて、まとめ上げた上で言葉を編み、決断する。
チャイはそういう言葉を大事にしている彼らを、
もどかしいと感じつつ、自分にはない要素だと感じる。
天狼星の町にとって、こういう感覚は失ってはならないものだと。
チャイは二人の意見の上に、計算ではじき出した意見を足す。
それは完璧なものようであり、また、それ以上の意見はないようであった。
電装脳はゆがまない。
だから、迅速に決定がなされる。

今日報告された案件も、そうやって現場に報告が返されていく。
すべてはよどみなく、滞りなく。

これはいいこと。
チャイは考える。これはいいことなのだと。
町のために、暮らしのために、人々のために。
チャイは電装脳にした。
これは、いいこと。

ちりっと、チャイの脳裏に何かが走った。
チャイの目が少しだけうつろになる。

『じゃあ、本当のあんたはどこにもいないんだな』

チャイはそんな言葉を聞いた気がする。
それはよどみから聞こえるような声だったと、チャイは記憶した。


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