悪鬼サクラ
電鬼が発生する。
配線の断線か、電気の起こしたよどみか、磁界でも起きていたのか、
正体不明の存在、電鬼が発生する。
それはいつのことだったかもわからない。
ずっと昔か、今このときなのか、
その電鬼は、いる。
電波をゆがませ、人に悪というものを教えている、電鬼。
正体不明、姿かたちも不明。
ただ、その電鬼は悪であるとして、
いつしか、特別な名前を与えられた。
悪鬼サクラ。
サクラは悪だ。
サクラは理に反している。
サクラのすることを許してはいけない。
それは、忌むべきものとして人々の噂に立ち上る。
忌むべきもの、悪鬼サクラ。
誰も退治できない、悪鬼。
ただ、正しいものの反対のものとして、
サクラは天狼星の町に存在し続けている。
正体不明が、正しくないもの、という正体を与えられたから、
だから悪鬼サクラという存在が、噂であってもあり続けるのかもしれない。
サクラは電装の磁力に引かれてあらわれるという。
姿があるわけでないが、
磁力を動力としている電装の者は、
しばしばサクラの声を聞くという。
性別も年の感じも不明で、ただ、この声はサクラだと。
直感で、これはよくないと感じるらしい。
磁力が電気の起こす独特のよどみのようなものだからか、
サクラはそういった電装の持ち主に、ささやくらしい。
よくないことを。
悪の言葉を。
気持ちの芯が弱いものはそれで折れてしまう。
サクラの言葉でどろどろと悪に染まるという。
サクラは理に反している。
サクラはよくないもの。
それでも人々から悪が消えないのは、
人々が善も悪も持っているから。
サクラは人でないから悪しか持っていないはず。
サクラは悪鬼サクラなのだから。
サクラの名前の由来はわからないが、
一説によると発狂した誰かがサクラを見たと叫んで絶命したという。
とても美しいものだったと、
マンカイノサクラというものを、狂った誰かは見たと。
サクラはどこかにいる。
悪の化身のサクラは、どこかにいる。