コビトの恋
コビトと呼ばれる者がいる。
コビトは半ば異形のものだ。
ソロバンのように正体不明なのではなく、
おかしな姿をしている、異形の者だ。
小さな背格好。とても小さなおじさんという類。
目はぎょろりとしている。
お世辞にも美しいという部類には入らない。
少なくとも、普通を美しいとするならば。
コビトは天狼星の町生まれではない。
長い長い年月をかけて、たどり着いたのだと、
コビトが語っているのを聞いた者がいるという。
コビトのしゃがれ声は、自分がどれだけひどい目にあってきたかを語り、
同情したのなら何かくれよと付け足す。
天狼星の町の、疑うことを知らない連中のあたりだと、
コビトに恵んであげることもあるらしい。
ただ、コビトはだんだんそれが嫌になったらしい。
コビトなりのなけなしの自尊心が、邪魔するようになる。
みんなが見下している気がする。
哀れみという名前の、奴らの優越感だと、
コビトは解釈する。
コビトは身の上を話しては、かんしゃくを起こす。
何かよこせというのに、もらったものを叩きつける。
コビトはうまく自分を表現できない。
悪にもなれない、純粋にもなれない。
みんな俺を見下しやがって!
今に見てやがれ!
コビトはそう思ったあとで気がつく。
コビトには何の能力もないということ。
小さな醜い人である以外、コビトには何もないこと。
ふらふらと町を歩いていると、
不意に、強い光をコビトは感じた。
コビトはまぶしさに目を閉じる。
そして、コビトは女性の声を聞いた。
天から降りてくる声だと、そのときのコビトは思った。
目が慣れてきたコビトが、目を開くと、
そこには、可憐な女性が写真機の小さなのを持っている。
コビトは阿呆のように彼女を見ている。
彼女はにっこり笑って、コビトを光で満たす。
特別なものは何もないけれど、ただ、澄んだ目をした彼女。
彼女はマルという名前で、
いっぱしの写真家気取りであるらしい。
コビトのことを変わった人だとは思ったらしい。
その彼女の微笑みで、
コビトは天にも昇る心地がした。