ハンマーと化石
ハンマーは発掘屋だ。
化石を発掘し、電気の材料として売っている。
天狼星の町の一番下。その一角に石が運ばれてくる。
どこかの町から、どこかの山から、
切り崩されてまとめられた石の山。
ハンマーはその石を砕いて、化石の精の高い石を、
圧搾機に投げ入れ、純度の高い電気を搾り出す。
高すぎる電気は動力に不向きなので、変換機を通じさせる。
残った石は、次の石運び業者が来たときに引き取ってもらったり、
あるいは、砕いて壁塗りなどの資材に使ったりする。
資材にするには化石が混じっていてはいけない。
ハンマーの仕事は、化石をちゃんと発掘すること。
それに尽きる。
ハンマーの仕事は、変換していない純度の高い化石の電気に触れることだ。
とても危険だ。
ハンマーもそれを承知しているが、
他に誰ができるだろうかとハンマーは思う。
電装しているような連中には任せて置けない。
電気に人生売ったようなやつらと、
電気をうみだすハンマーは違うと、ハンマーは誇りを持っている。
みんなのために、そうかもしれないけれど、
ハンマーはもっと何かよくわからないもののために動いていると感じている。
ハンマーは化石をごつごつと掘り出す。
今日も明日も明後日も。
きっとこの発掘作業が続く。
発掘、圧搾、変換。
この小さな化石の中に、皆を幸せにする電気が詰まっている。
ハンマーの宝物であり、
天狼星の町の財産でもある。
化石とは、古い命が石にかわったものだ。
命がこんな風になって、幸せのために使われるのなら、
それもいいかもしれないとハンマーは思う。
どこかから、石が今日も運ばれてくる。
ハンマーはこの地に根ざしたかのように、
天狼星の町の下の一角でこつこつと同じ作業を続けている。
発掘、圧搾、変換。
どこかの山、どこかの町、
命のかわったものは、どんな風に眠っているのだろう。
石のかけらをハンマーは見る。
化石は何も語らない。
ハンマーも、何も語らない。
今日もハンマーは化石を発掘する。
みんなのために、幸せのために。
ハンマー自身の何かのために。