サクラの情報
オトギが残していった言葉。
天狼星の町の取り壊しを回避できる手段。
それは噂になって街を駆け巡る。
住人を介し、役人を介し、老頭に届く。
チャイは、電装によってきたサクラと、
部屋で静かに対話をしていた。
サクラは悪だという。
悪鬼サクラだ。
でも、天狼星の町を取り壊そうという、国は悪か。
チャイにとっては、国が悪だ。
でも、国にいる大半の国民というものは、国が正義だと信じているはず。
でなければ、国というものが成り立つまい。
天狼星の町が、そもそも異質なのかもしれない。
だから、壊すことになるのかもしれない。
それこそ、兵器まで持ち出して。
『思うにね』
サクラがチャイの中で話し出す。
『サクラは、この町の住民を見た。全部』
そうか、と、チャイは答える。
『でも、一人だけ異質なのがいる。それはサクラじゃないよ』
チャイの電装脳が計算を始める。
『無理、チャイが感じた限りの情報では、あの子は導き出せない』
あの子?チャイは尋ねる。
『あの子。この町で生じた子だよ。あの子は過去がないんだ』
正体不明か?
いや、電鬼か?
『わからない、けど、異質。今は町の中で制御されてる』
制御?それはどういうことだ?
チャイの電装脳が町の案件や住人情報をはじき出す。
『磁気があるとあの子は落ち着くんだ。首飾りにそういう力がある』
磁気…首飾り…
チャイの電装脳が一人を導き出す。
ネココのことを。
『そう、ウゲツのところの助手。国はきっとあれを狙っている』
どうしてそこまでわかる?
チャイは問いかける。そして、制御という言葉を思い出す。
『磁気を呼吸して落ち着いていたネココは、町を出ると解放される』
チャイは考える。
『どんなものが眠っているかは知らない。けど、国はそれを利用しに来たんだ』
そこまではサクラにもわからないか。と、チャイは問う。
『今は、まだ。でも、悪いことは考えてる』
サクラが笑う。
チャイもわかる。
『国に一度渡したからといって、取り返さないとは誰も言わないよね』
一度ネココを渡して、取り返す。
文句は言わせない。
この町の老頭がそう決める。
『手伝うよ』
サクラは多分楽しんでいる。
これは悪なのか。
チャイは判別がつきかねた。