未知数の空
ソロバンは構築式を作る。
ギムレットが頼んできた構築式は、
空を飛ばせるという前提の下の依頼だった。
「そら」
ソロバンはつぶやき、
見たこともない空を空想する。
ソロバンは知識としてならたいていのことはわかる。
でも、感じたことはない。
空を飛ぶというもの。
風を感じて、空を突っ切るもの。
すべてはソロバンの知識における、空想に過ぎない。
「オウムガイ」
形状はギムレットから聞いている。
化石によく出てくるオウムガイの形状、
それは電気効率がとてもよいのだという。
そもそも、空を飛ばす。
それはチャイの発案らしく、
チャイの得たどこかからの情報にそって、
ギムレットやソロバンに、この依頼が来たという。
ソロバンはもう一度前提を記したものを見る。
書類を手に取り、読む。
いつものようにかぶりものをかぶっているが、見えてはいるらしい。
今回の依頼の前提。
国はサカナ大佐の指揮のもと、
空から戦艦ミノカサゴでやってくるという。
ソロバンは、戦艦の形状を頭に叩き込む。
そして、文字や数字、あらゆる情報を把握し、理解し、構築式を作る。
構築式は理。
ソロバンはそうだと信じている。
チャイの書類によれば、理不尽な欲求に対して…というくだりがある。
「りふじん」
ソロバンは声に出してみる。
よくわからない。
構築式は難しくない。
ただ、未知であるものが多すぎる。
風とは、空とは、そして、ソロバンの理解できない、
「かんじょう」
電波を受けて生きている天狼星の町のものが、
空というところで解放されるとき。
それは、電波から感情というものが解放されるとソロバンは踏んでいる。
それが未知数。
国が欲しているという、ネココというものも未知数。
どうやら磁気で制御されているというが…
ソロバンは、こんなに未知数だらけの構築式を作ったことがない。
ただ、ソロバンは己が高揚していることを静かに感じる。
たとえば、こうなったら、
たとえば、こうなったら。
いくつもの可能性を、ソロバンは構築式に託す。
この計画はオウムガイに乗せるソロバンの構築式にもかかっている。
「上等だね」
ソロバンは愉快ということを知る。