力を合わせる
「いってしまったのか」
サンカクは、残念そうに言う。
「サンカクおじさんくらいだよ。彼女の噂を知らないの」
「マルも最近ぼんやりしていてね。あまり話をしなくてね」
サンカクはそういいながら、写真機を一つ、きれいな布巾で拭いている。
話の相手となっている、ゼニ少年は、
適当な椅子に腰掛けて、足をぶらぶらしている。
「彼女の写真、撮れずじまいだったの?」
ゼニ少年は尋ねる。
「ああ、多分撮っていないよ」
「多分?なんで?」
「サンカク写真館では撮っていないさ」
「ああ、マル姉ちゃんなら撮っているかもしれない?」
「そういうことだ」
サンカクは穏やかに微笑んだ。
「しかし、彼女は一体なんだったんだい?」
サンカクは尋ねる。
「ネココって名乗っていた、電鬼という噂があるね」
「電鬼なのかい」
「僕はそんな風には感じなかったな」
ゼニはウゲツとネココのことを思い出す。
普通の天狼星の町の、少年少女だと思った。
それ以上でも以下でもなかった。ゼニ少年はそう思う。
「サンカクさん」
ゼニは呼びかける。
「噂では、国がまだにらんでるってさ」
「国……ああ、そもそもはここを壊してまでという話でしたか」
「そうそう、で、外で戦艦ミノカサゴが浮かんでるんだって」
ゼニ少年はサンカクに噂をどんどん話す。
まだ天狼星の町から奪い足りないとか、
まだ町を壊すことを諦めていないとか、
ゼニ少年は国が何をしたいのかわからない。
ただ、噂をぽんぽんと。
サンカクは時折うなずいて聞いている。
「老頭が何かたくらんでるらしいけど……」
ゼニ少年は、そのことについてはよくわからない。
「老頭、ね」
サンカクは言いながら、写真立てを一つ手に取る。
「一体どうなっちゃうんだろうな。僕にはわかんないよ」
「老頭が知恵を出し合えば、きっとよくなるよ」
サンカクは微笑む。
置かれた写真立てには、若者が四人。
ゼニはその彼らを知っているような知らないような。
「みんなで力を合わせれば、結構どうにかなるものさ」
サンカクはごく自然にそういった。
ゼニもそうだったらいいなと思って、うなずいた。