空よ
コビトはこっそり、ハンマーの階層まで下りてきていた。
ハンマーはいつものように化石を掘っていて、
コビトなど気にも留めないようだ。
先ほど、化け物のような殺気を感じた。
カタナだろう。
でも、そんな気配を出して交渉はどうなるんだろうか。
コビトは不安になる。
町が壊されてしまったらどうしよう。
カタナのことだから勝算があってのことだろうけれど、
どうか、この町を守って欲しいとコビトは思う。
せっかくたどり着いた居心地のいい町だから。
とてもとても、安心できる場所だから。
コビトは、屑石の近くに腰をかける。
健全な電波というやつで、コビトは安心しているのだろうか。
見上げれば、天狼星の町の空中線がずらりと。
なかなかに壮観だと思う。
空はどこもそうであるように青く。
旅をしてきた町の空がそうであったように青く。
「ハンマーさんよ」
コビトはなんとなく呼びかける。
「俺の旅してきた町にはな、空にカミサマってのがいるんだとか」
「……なんだ、それは」
「さぁな、俺にもよくわからない」
コビトは風に目を細める。
ぎょろりとした目を、気持ちよさそうに。
「カミサマってのは何でも知ってるんだとさ」
「なんでだ?」
「さぁな」
コビトも旅で聞いたことでしか知らない、
カミサマというもの。
祈れば願いすらかなえてくれるという。
祈りとはよくわからないが、強い願いだろうか。
「この町にもカミサマはいるのかな」
コビトはなんとなく、そんなことをつぶやく。
「いてもいなくても、やることをやるだけだ」
ハンマーは石を砕きながら答える。
チャイとカタナが戻ってくる。
交渉は終わったのだろうか。
「どうだったい?」
コビトはたずねる。
チャイが答える。
「一日、戦艦ミノカサゴを、空に泳がせるらしい」
「なんだい、どうしてだい?」
コビトはたずねる。
「足りないものがあるという。一日待つという。そういうことらしい」
「なんだい、足りないものって」
コビトはわからない。
「足りないと、彼女が不安定だという」
「不安定?」
『つけいるなら、そこだね』
頭に、何かの声が聞こえた気がした。
コビトは、なんだか怖い声を聞いた気分になった。