らしくない


サクラは悪鬼だ。
悪いものだ。
サクラはチャイの記憶を通して、大半の住人のことを知った。
その上で、チャイの電装脳の構築式を使って、
どう行動するべきかを演算した。
大体の結果がでているけれど、確定していない要素が多い。
サクラはそれを面白いと感じる。
この町がどうなるかということより、
何かをめちゃめちゃにしてやりたいと思う。
それは、多分、あの武士がそうだったように。
「カタナか」
チャイがつぶやく。
チャイはサクラの思考がわかってきているらしい。
サクラは悪だ。それなのに。
「電装脳に直接いるんだ。大体のことはわかる」
チャイ、あんたも悪なのかい?
サクラはたずねる。
「国にとっては悪だろうな」
チャイはいつもの調子で答える。
何かを諦めたような、見通しているような。

カミカゼがギムレットのところにいった。
もう、オウムガイは完成しているだろうし、
ソロバンの構築式ももうすぐ完成するだろう。
戦艦ミノカサゴは一日空にいる予定だし、
ウゲツという少年は……一級永久磁石を持っていて、
ネココを取り返しに行くと決意しているはずだ。
戦艦は大きく壊すことには優れている。
ただ、一人乗りのオウムガイが機動力を生かしたらどうか。
サクラは想像しただけでわくわくする。
演算でない、サクラの考える世界。
そこはチャイも同時に考える世界。
「たのしいか」
チャイが尋ねる。
サクラは笑って返す。
チャイは軽くため息をつく。

「電装脳がなくても、悪鬼は存在できるらしいな」
何をいまさらと、サクラは考える。
「ウゲツについていってやれ。特等席で戦いが見れるぞ」
サクラはしばし絶句する。
悪鬼になんてことを言うんだ、この老頭は。
「国の情報網にも入れるのだろう」
サクラはたずねる。
厄介払いかい?と。
「いや、天狼星の町が、サクラの故郷だ」
こきょう、と、サクラは復唱する。
「国につきたいならそれでもいい。ただ、故郷はここだ」
この言葉を、オトギにもいいたいんじゃないかとサクラは考える。
でも、そういう野暮なことは言わない。
伝わっているけれど、サクラは言わない。

『悪鬼を解き放つと大変なんだからね』
サクラはいつもの調子でそんなことを言う。


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